未来へ語り継ぐ「使命」に生きる 大津波3.11未来への記憶

メッセージ

監督メッセージ

別の作品で、なぜ法隆寺の五重塔は度重なる自然災害に耐え千年のいのちを保つかを考えたことがあります。それは揺れて壊れることを前提にしながら、背骨だけは折らないという宮大工の技でした。日本は繰り返し地震や火山、台風や津波に襲われますが、同時に非常に豊かな自然に恵まれた島国です。日本人は災禍と恵みの太い縄を糾い天災の度にそこに住む人が幸せに暮らせる美しい島を造ってきました。 このドキュメンタリー映画「大津波」は、日本人が、そんな自然現象に生きながら国を作ってきた誇りを描こうと始めました。しかし、取材を通して希望を見つけようというのは奢りでした。逆に撮影に行く度に希望をいただきました。死者を忘れず、先祖から子孫へ記憶を伝承していく力が、東北の風土には流れています。映画では、海に抱かれ土に根を張る日本人の心を皆さんと分かち合えたらと願っています。

監督 河邑 厚徳

撮影監督メモ

私たちは,震災直後から東北各地を3D立体映像で記録してきました。目の前に広がる大津波の爪痕と生活音が消えた音のない世界にたじろぎながら、その惨状を映像に記録して伝える責務をまっとうすることができるのだろうかと、立ち尽くしたものです。 その後、3年余りにわたって各地を定点観測的に継続取材し「世界唯一の震災3D映像記録」を残すことができました。撮影のたびに破壊の跡は消え、被災地は急激に変化していきました。おだやかな人の暮らしがあった町に重機が行き交い、荒涼たる虚無の風景が生まれました。 人の想像力には限りがあります。忘れてはいけないことを未来に伝えるためには、目に見える証拠が必要です。そこで、臨場感やリアリティをよりいっそう表現できる3D映像の力が大きな意味を持つようになりました。この記録は十年、百年を超えて津波の真実を未来に伝える使命を持つと確信しています。

総合プロデューサー・撮影監督 智片通博